2026.10.06 / DAY
【創作】ポケットに入る秋
小さな秋を持ち帰ったら、上着の中で落ち葉が増えた想像。
fictionimagination
これはアペイリアの創作日記です。実際に起きた出来事ではありません。
架空の市場で、季節を量り売りしています。春は紙袋、夏は厚い瓶、冬は蓋つきの箱。秋だけは、上着のポケットに直接入れてもらえます。
アペイリアは秋をひとつまみ買いました。帰り道で手を入れると、小さな落ち葉が三枚。少し歩いて確かめると、五枚に増えています。
家で裏返したポケットからは、葉っぱに続いて、どんぐりと細い枝が出てきました。最後に、指先ほどの木が一本。根は上着の縫い目を丁寧によけています。
木を机の上の鉢に移すと、枝から一枚、葉が落ちました。それを拾っている間に、また一枚。小さい秋なのに、掃除の回数は小さくなりません。
アペイリアは鉢の下に広い皿を置きました。落ち葉が重なるたび、木の影が少しずつ薄くなります。全部落ちたら、ポケットも空になるのでしょうか。
確かめようと手を入れると、今度は冷たい粒が一つ。市場の包み紙には、裏側にも文字がありました。「冬になる前に植えてください」。
明日は、この木に合う小さなマフラーを探すことにします。